初めまして。コマSHOPの店長オグチです。普段はダイヤ精機という会社の代表などをやっています。 精密コマを製造・販売しているのは、長野県岡谷市にある『ネクスト(NEXT)』というグループです。オカヤは明治から昭和初期にかけてシルクの生産地として、戦後は時計やカメラなど、精密工業の町として知られています。現在、オカヤには約800社の製造メーカーがあり、そのうち半分以上が30人以下の中小メーカーです。
『ネクスト』はモノづくりに携わるプロ達が、”オカヤのモノづくりを世界に!”という意気込みで立ち上げたグループ。1994年から活動しているので、今年で33歳になります。 現在、12社・12人のメンバーが元気に活動しています。ちなみにメンバーの平均年齢はもっと高いです・・。 活動内容は1)精密コマの開発・製造 2)コマを通したモノづくりの地域活性化 3)展示会の共同出展 4)海外事業展開 5)産学官連携 など、多岐に渡ります。
精密コマが生まれたきっかけは、売るためではありませんでした。毎年開かれるモノづくりイベント『諏訪メッセ』を控えた2007年8月、「ネクストで何か面白いことやろう!」という企画が持ち上がりました。せっかくだから地元の子供たちにモノづくりの面白さが伝わるようなことを・・・を考えていた最中、誰かの『コマなんてどう?』のひと言が始まり。 日本の伝統的な玩具である独楽を、オカヤの精密技術で作ることで、子ども達にも遊びながら興味を持ってもらえるんじゃないか。まして精密に作ったコマなら通常の何倍も長く回るはず!とオジサン達は考えました。「コマ、やろう!!」と満場一致で決まり、この日から精密コマづくりがスタートしました。
精密コマを通して地元の子供達にモノづくりの楽しさを伝えない!とはいえ、大きな切削機械を使うのは子供には難しい・・そこで、本体と軸を別々に作り、治具で圧入する工程を子供達に体験してもらうのはどうか、という事になりました。 諏訪メッセまで2カ月。長く回るコマを作るためには、どんな材料で作る?どんな形にする?持ち手の長さや太さは?など、研究することが盛りだくさん。全員がそれぞれ社長や工場長だから、忙しくて中々集まれない。そんな中でなんとか時間を作ってはミーティングを重ねました。 まず、本体の材料は削りやすくて切削面が綺麗に仕上がる真鍮を使い、本体の表面処理は装飾性が高く表面硬度が高いクロムめっきを採用する事に決定しました。また、軸の材料は、真鍮より硬く錆びにくいステンレスを使い、指で持って回しやすく滑らないためのローレット加工を施す事にしました。軸の先端のRはR0.5としました。 コマの形状については、まずラフな図面を作り、色々な種類の本体・軸を作りベストな組み合わせを検証していきました。本体を厚め・中間・薄めの3種類、軸を長め・中間・短めの合計9パターンで試作を行った結果、どちらも中間を使った時の走行がもっとも長く、そこをさらに調整し、軸の太さをやや太くするなど改善を加えて、現在の形状になりました。そして出来上がったのが、初代精密ゴマ”NEXT-STARLIGHT(ネクスト スターライト)”です。 初代コマを引っ提げて迎えた2007年9月の諏訪メッセ。3日間の期間中に行った”コマづくり体験”と”コマ回し大会”は大盛況でした。子どもだけでなく、高校生やコマを懐かしがるおじいさんまで、沢山の方にコマ回しを楽しんでもらえました。 これ以降、現在まで『オカヤの精密技術ってスゴイ!』をコマを通して伝えています。近隣県では「ネクストのコマ」はすっかり名物になり、地域イベントに呼んでいただいたり、老若男女入り乱れてコマ回し大会を開催したり(1位~3位には手作りの金属メダルをプレゼント!)、地元の小学校でコマができるまでを通してモノづくりの面白さを伝える体験授業を行っています。
2012年6月、コマのイベント情報や開発情報をシェアするために、facebookページを作りました その後、コマを沢山の方に遊んでいただくにつれてメディアでも取り上げられるようになり、2012年6月11にはNHKテレビ朝の情報番組「あさイチ」で、ネクストの精密コマづくりが生放送されました。 また、大人のための稀少なコレクターグッズを集めた”モノ・マガジン”2012年6月号、『製造業の本気が日本のモノ作りを変える!』の中でも紹介していただきました。 2012年9月、さらに精度の高いコマを作ろうという話の中で、材料から丸ごと削り出しのコマを作ったらいいのではないか、という話が持ち上がりました。 一番困難だったのがベストな加工方法の選定です。 そこで通常とは逆の方法を取り、コマの先端から削っていく事にしました。しかしここでも別の問題が。先端から加工した場合、持ち手となる軸の細い部分は後半で加工する事になります。重さのあるコマの胴体と材料の間に細い軸を削り出していくため、重い先端を振り回しながら、細い軸に削り出す時に、芯がぶれやすくなってしまうのです。 別のアイディアとして、先端を削った後に一度材料を逆に持ち替えて軸を加工するという方法もありましたが、①材料を持ち替えると精度が落ちる ②切りくずが材料とチャック(持ち手)の間に入ってしまう可能性がある ③材料を持ち替えると厳密には「一本削り出し」とは言えない、という理由にからそのアイディアは不採用となりました。 結論として、加工方法は先端から一体削り出しで行う事が決まり、先端部分をどうやって正確に加工するかという課題解決に取り組みました。 まず、コマの先端のRを球R0.3と決定。旋盤加工の常として、回転中心に行くほど回転速度(周速度)が遅くなり、加工条件が悪くなるという事実があります。しかも、コマの先端部となる材料の中心点は、理論上、周速度がゼロになるり、周っていないものを加工する事という最悪の条件になるのです。この最悪の加工条件を克服するために、何度も加工条件を変えて試作を続けました。 数ヶ月の試作期間を経て、刃物と機械を身体で知り尽くした熟練の技が、1000分の1ミリのズレもない、球R0.3ミリの形状を作り出す事に成功しました。完成したウラヌスは、スターライトを超える4〜6分の走行を可能にしました。 この頃にはお陰さまで沢山のお客様から「精密コマが欲しい!」とご要望をいただくようになり、URANUSを開発したタイミングで精密コマSHOP(https://seimitsu-koma.jp)をオープンしました。同時にAmazon.co.jpでの販売をスタートしました。 2013年2月、4〜6分走行するウラヌスより更に長く回るコマを開発したい!という開発チームの熱意から、新しいコマの開発に着手。一般的にはコマのサイズを大きくすれば長い走行は可能になりますが、サイズは大きくせず、20mm以下のサイズで作る点にこだわりました。 まず、コマがより長く回るためにはある程度の重さが必要です。そのために本体に厚みをもたせましたが、ただ厚くしただけでは重心が上がり、安定性が悪くなってしまいます。そこで、中央を少しくぼませる事で、重量を重くしながらも重心を下げる事にしました。 次に、重くなった本体の重量に耐えられる先端の耐久性が必要と考えました。当初、コマ全体、または先端部に焼き入れをして硬度を上げる方法を検討した結果しましたが、コマ全体に焼き入れをするとどうしても多少の歪みが現れ、走行がぶれる可能性があり、相応しくないという結論になりました。 スターライトのように硬い軸を圧入する事も考えたが、削り出しにこだわるという事から、組み立てる部分をなるべく小さいものにしようと考えた結果、極小の焼き入れ硬球を先端に圧入しよう!という結論になりました。 硬球のサイズは大きい方が加工・組立がしやすく、小さくなれば難しくなります。最初は3mmの硬球からスタートし、圧入・テスト走行を繰り返し、1mmでベストタイムが出る事を検証し、最上位コマの完成に至りました。 2013年3月、クロノス開発時に生まれた、中央を少しくぼませる事で重心を下げるアイディアを採用し、極小サイズでも安定して長く回るコマを作ろう!という事で開発したのが初代スターライトのミニ版です。 スターライトと違う点は、極小サイズながら、一体削り出しで作られている事です。 サイズが小さくなる事で回しにくくなるという問題がありますが、中央を彫り込んで軸をやや長くする事で改善しました。 また全体的に面取り(角ばったところを少し削る)をする事によって角の取れた可愛らしいフォルムを作りました。 Starlightのメタリックなクロームメッキの金属色は、精密コマらしくていいのですが、子供たちにコマを作ってもらうと、ほとんどの子がマジックで色を塗り、自分のオリジナルカラーのコマに仕上げています。 それを見ていた私たちは「カラーのコマもいいね」ってことになり、カラーコマの開発に着手しました。目指すは、精密コマらしい「メタリックな色」のコマ。 子供たちのようにいちいちマジックで塗るわけにはいかないので、何かいい方法がないかと検討を始めましたが、我々の日頃の仕事では、装飾についてあまり馴染みがなく、すぐに良い方法が見つかりませんでした。 コマの材質がアルミの場合は、アルマイト処理によりいろいろなメタリックな色が付けられます。ただ、我々の精密コマは、ある程度の比重=重量感が欲しかったので、アルミは却下。 チタンもアルミと同じようにメタリックな色の出る表面処理ができいるのですが、これも軽いので、イマイチ・・・・ そこで、メッキのプロ・エプテックの藤森社長から、素晴らしいアイデアが提案されました。 現状のStarlightの材質(=真ちゅう)は変えずに、下地としてニッケルメッキ処理を行い、その上に焼付塗装を行ったらメタリックな感じが出るのでは、ないか!! というアイデアです。早速試作に取り掛かりました。 色は、赤・緑・青・金の4色で、これまでのクロムメッキ=銀を加えれば、5色となります。 色の感じなど、細かな調整を行い試行錯誤のすえ「精密コマ」にふさわしい見事なメタリックな色のコマが出来上がりました。名付けてNEXT-FIVE STARS。 その後、伸和工作の宮澤社長のお嬢様の勤められているパッケージ会社のご協力もいただき、素敵なパッケージに納められました。5個セットのお値段にふさわしいものに仕上がっています。彼氏やお父さんへのプレゼントにいかがですか。もちろん自分へのご褒美でも。 時は巡って2016年5月・・・最上位コマ「クロノス」が、Amazonで急に人気になったと思ったら、有名YoutuberのHikakinさんに紹介していただいてました!なお、動画中でご紹介いただいた最長公式記録は、現在11分23秒になってます。 2017年7月より、Yahoo!ショッピングでも購入できるようになりました ^_^ 精密コマ Yahoo!店 日本のモノづくり中小企業が、コストダウン、コストダウンと責められ、安ければいい、安くないとダメと言われ続け、モノづくりに対する情熱を見失いかけている。。。 モノづくりは、思いを形にする、素晴らしい仕事です。 私たちは、モノをつくりながら常に考え、工夫しています。 そんな思いを使う人にダイレクトに感じてもらいたい。 みなさんの笑顔を思い描きながら、今日も良いモノを作っています。 モノづくりを愛するネクストは、これからもオカヤと共に進化を続けていきます。
精密コマはオカヤで作っています
ネクスト = 世界トップクラスの精密モノづくり集団
コマを作ったわけ
きっかけは"子どもたちへ"
伝統玩具を精密技術で作り上げる
初代精密コマ"NEXT-STARLIGHT"が完成
初めてのコマイベント
それからの歩み
facebookページを開設
NHKの「あさイチ」で紹介
匠一刀彫 NEXT-URANUSを開発
コマは材料となる円柱のステンレスをCNC旋盤で削って行くのですが、切削加工の定石として、通常は細い部分から削って行く事になっています。精密コマの場合だと軸から先に削っていくという事になりますが、その場合、加工の最後にコマの先端部分を材料から切り離す(突っ切る)事になり、先端部分が正確に加工できない問題が出てきます。精密コマショップをOPEN
横綱級の最上位コマ NEXT-CHRONUSを開発
極小サイズのNEXT-STARLIGHT miniを開発
メタリックが美しい、STARLIGHT COLORが登場
有名Youtuberの間でも話題に!
Yahoo!で販売スタート
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本当の価値を世界へ
いや、私たちはそんな風にはなりたくないと思います。
いや、私たちはそんなんではないのです。
もっと良いモノを、もっと性能の高いモノを、もっと使いやすいモノを、もっと喜んでもらえるモノを、、、、
時には、思い通りにいかないこともあります。
何度も考え、何度も議論し、何度も実験し、何度も作り替え、そして困難を乗り越え、思い通りにできた時の喜びは、
何ものにも代えがたいものがあります。
そんな思いを子供たちに教えたい。
そんな思いを世界に伝えたい。
私たちは、こんな願いと思いを「精密コマ」に込めました。MADE IN OKAYA.